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November 2,2016

IoTではビジネスの問題が最優先


投稿者:Amar Parmar

サンフランシスコのベイエリアに住んでいると、多数のテクノロジソリューションやプラットフォームが毎月のように登場するのを目にします。現在の流行は「IoT」であり、多くのプラットフォームがIoTに狙いを定めています。2016年7月のガートナーハイプサイクルを見ると、「IoTプラットフォーム」はまだ最盛期に達していないことがわかります。このため今後数か月にわたって、さらに多くのプラットフォームが現れるものと予想されます。

IoTエコシステムには多くの関連企業が存在するため、この記事で使用する定義を明確にしておきたいと思います。「ベンダ」は、OEMメーカーにコンポネントを提供する企業を指します。「OEM」はデバイス、製品、サービスを作る企業、「顧客」はIoT製品の消費者を指します。

IoTベンダのアプローチ

先ほど述べた「IoTプラットフォーム」では、ハードウェア機器の構築を容易にしたり、クラウドへのデータ移動を容易にするなど、さまざまな課題の解決が試みられます。価値を創出できる5つの広範な技術分野(ハードウェア、ファームウェア、ネットワーキングスタック、クラウド、機械学習)を見てみると、2つのアプローチが登場していることがわかります。

1) 集中的(専門的)アプローチ:このアプローチでは、ベンダは単一の技術分野において最高のソリューションを構築しようと試みます。たとえばハードウェアベンダは、できる限り最適な価格/性能のハードウェアチップを構築しようとします。そこで、他企業と提携して、最適なRTOS/OS、ネットワーキングスタック、クラウドAPIをチップでサポートできるようにします。さらに一歩踏み込んで、上記の各技術分野の多数のパートナーをサポートし、エコシステムを構築する場合もあります。

2)プラットフォームアプローチ:このアプローチを採用するベンダは、ハードウェア、ファームウェア、ネットワーキングスタック、クラウド、機械学習ライブラリをすべてまとめ、単一のソリューションで提供しようと試みます。こうした技術領域を統合することで、OEMが各自でオプションを選ぶよりも優れた、より適切なソリューションを構築できると考えているためです。最近、このアプローチの採用が増えています。

上記の2つのアプローチが市場において価値を創出する一方、当社がIoTの最大の問題を把握するべくOEMに調査を実施したところ、以下の2点が明らかになりました。

1) ビジネスモデル:要するに、OEMはIoTでいかに利益を上げるのか、ということです。結局のところ、企業は収益を増やし、コストを減らし、リスクを軽減する必要があります。ビジネスモデルがなければ、使う当てのないソリューションを手にすることになります。この点については、後ほど詳しく取り上げます。

2)セキュリティ:IoT製品はその名のとおりインターネットに接続されるため、セキュリティは重大な課題です。インターネット接続によって製品は、攻撃ベクトルが増えることになります。OEMは従来、この問題に対処する必要がなかったため、この水準のセキュリティに関する知識や専門技術を持っていません。この点については、別の投稿で取り上げます。

ビジネスモデル

変化する顧客の期待

これまでは、製品を開発し、セールス、マーケティング、流通の基本原則に従うことが当然のことでした。OEMは何らかの製品を開発し、既存のチャネルに沿って売り込んでいました。しかし、IoTのすばらしき新分野において、既存のOEMはIoT製品の売上拡大に苦戦しています。たとえば、サーモスタットや冷暖房設備に関して最も豊富な知識を持つ、Honeywell、Trane、Carrierなど既存の市場リーダーの前では、Nestなどの企業の存在が傑出することはこれまであり得ませんでした。仮にあったとしても、そこに至るまでに長い時間がかかったはずです。しかしながらIoTの世界においては、2010年に設立されたNestが、2014年には32億ドルで買収されています[1]。一方、既存企業のネットワーク対応ホームオートメーション製品は、それほど話題になっていません(おそらく、売上もそれほど多くないでしょう)。既存企業は既存のチャネルを利用し続けていましたが、Nestはサーモスタットやセールスチャネル、およびエンドユーザとの関係を再考し、これによって非常に大きな顧客ロイヤルティを生み出しました。

現在はIoTの顧客(IoTデバイス、製品、サービスの消費者/ユーザ)が、IoT対応OEMとより密接かつ直接的な関係を築きたいと願う傾向が、かつてないほど強まっています。顧客はOEMに以下を期待しています。

1) 製品をできるだけ直接的に販売(仲介を減らす)

2) 製品寿命全体にわたって製品のサービス/メンテナンスを提供

3) 分析、制御&監視、アップグレード、診断などにより、継続的な運用サポートを提供

4) 運用コストから設備投資コストモデルへのコスト転換を支援

データ/インサイトはIoTの新通貨

先ほどの例で言うと、Nestは収集したデータによってアルゴリズムを補強・強化しました。これにより、家庭内の一製品というよりも、多くの家庭にまたがる製品体系ができあがり、ある家庭グループから(機械学習を通じて)得られた情報を、他の家庭に適用できるようになりました。インサイトが向上するたびに、Nestに対する顧客の信頼とロイヤルティは高まりました。

このようなネットワーク効果に関する話は、自動車、インダストリアル、スマートシティ、スマートビルディング、エネルギー、ヘルスケア、航空宇宙に至るまで、ほぼすべてのIoT業界で聞かれます。ただし業界の既存企業は、自社やその製品に関して「データ」戦略を採用するのに手間取っているようです。こうした企業は通常、既存製品の改良や高速化、低価格化(たいていはコスト回避と運用コスト削減に専念)に忙殺されています。しかし、仮に「データ」戦略を採用すれば、膨大な価値を引き出し、かつてないほどの競合優位性を得られるはずであり、ASP(平均小売価格)を引き上げ、顧客ベースを拡大(収益を増加)できるはずです。

経営幹部からの最小限のサポート

経営幹部は、2020年までにオンラインになるIoTデバイスについての予測を耳にしており、その数は200億[2]から2,000億[3]にまで至ります。この数値から、経営幹部はIoTがビジネスにもたらす確かな可能性に気づき、IoT分野への参入が必要だと考え、そのための資金を割り当てています。しかし、実際にたどっているプロセスは、これまでと変わっていません。

経営幹部は、エンジニアリングチームやイノベーションチームに問題を任せる一方で、魔法のような製品の登場を期待しています。こうした製品が登場する可能性はありますが(通常は下記の理由により登場しません)、その製品に付随するビジネスモデルが、当該チームから生まれることはありません。このチームには、新しいビジネスモデルを構築する能力も権限もないため、他の部署はこのチームに既存のビジネスモデルに従うよう強制し、結果としてプログラムは失敗に終わります。

最も適切な意図を持ったチームですら、2つの障害に行き当たります。つまり、経営幹部による審査/改良サイクルと、販売/製造サイクルです(セールス部門は現実的ではないものや、比較的新しいものは販売しようとせず、製造部門は売れないものは製造しようとしません)。そのうちに顧客の期待が変わってしまい、仮に製品が作られたとしても、最小限の影響しか及ぼしません。

コネクティビティのバリュープロポジション

エンジニアリングチームはコネクティビティの実現で手一杯であるため、新しいネットワーク対応製品に関する新しいビジネスモデルやバリュープロポジションを構築する人はだれもいません。当該企業が審査/改良サイクルを終えた後であっても、顧客がネットワーク対応製品の価値を見出さず、お金を出そうとしません。

セールス部門の奮闘は、顧客組織のあらゆるレベルで続きます。ネットワークに新たなデバイスを接続する面倒を避けたいIT部門や、現行のソリューションに満足し、ネットワーク対応製品に価値を見出せない運用部門、および「接続コストを追加するだけの価値があるのか」「ROIはプラスになるのか」と懐疑的な財務部門などです。また、ビジネスモデルの責任者がいないため、こうした障壁を克服する方法について熟慮する人もいません。さらに、OEMのセールスグループは四半期の業績目標の達成について心配しているため、契約を勝ち取る明確な道筋がない限り、新製品やシステムを検討しない傾向にあります。

「なぜこの製品を接続する必要があるのか」「ネットワーク対応製品を実現することでどのようなメリットが得られるのか」「ネットワーク対応製品のROIはどの程度か」といった基本的な質問に、OEMが回答できるようにする必要があります。その後で初めて、OEMは新しいネットワーク対応製品を顧客に受け入れてもらい、購入するよう説得したいと願うようになります。

適切な人材を見つける

OEMはこれまで、何とか自ら製品を作ることに成功してきました。実際、構築された多くのIoTプラットフォームは、ドメインに依存しないものです。OEMはIoTプラットフォームを使用し、その上にドメインの知識を重ねることを期待されています。これは通常、まったく新しいエンジニアリングサイクルとなり、新たなスキルセットが必要になります。しかしインテルラボの調査によると、企業は適切なコーディングの知識を持った有能な人材の採用に苦慮しています。

先ほど取り上げた、5つの技術領域にわたる問題について考えてみましょう。ここに、ビジネスの側面を追加します。以下の表に示すように、各側面には多くの選択肢があります(このリストは包括的なものではなく、すべての選択肢が示されているわけではありません)。選択肢はこの数年間で飛躍的に増加しています。

IoTプログラムに着手した経営幹部は、既存のエンジニアリングリーダーに頼るべきでしょうか、それとも新たに人を雇うべきでしょうか。新たに雇う場合、募集要項にはどのように記載すればよいでしょうか。多才な人物か、専門知識を持った人物のいずれを採用しますか。先ほどのインテルラボの調査によると、OEMに必要なのは、広範かつ深い知識を同時に併せ持ったチームです。ご想像のとおり、こうした人物(またはチーム)を見つけるのは非常に困難です。

IoTデザインセンター

ウインドリバーは、多くのOEMが成功に必要なIoTビジネスモデルを導入しておらず、そのため競合他社が成功している場合でも、「システムは作ったけれど、それほど成功していない」という結末に陥っていることに気づきました。新しいIoT製品に関しては役立たない、既存の販売チャネルを継承している場合もありました。さらに、幅広い分野の有能な人材を見つけることは、非常に難しいことにも気づきました。

こうした問題を克服するため、「ネットワーク対応の安全なターンキーソリューションを通じて、お客様がIoTの潜在能力を活用できるよう支援」するという使命を掲げ、ウインドリバーIoTデザインセンターが設立されました。ウインドリバーはこの卓越した研究拠点を通じて、以下に関するIoTコンサルティングサービスを提供します。

  1. ビジネスモデル
  2. 製品戦略
  3. 技術戦略
  4. OT/ITシステム統合
  5. プロジェクト実施
  6. クラウドソリューション(UI/UX、Helix Device Cloud、およびデバイス管理を含む)
  7. RTOS、Linux OS
  8. 機械学習
  9. セキュリティ

ウインドリバーのIoTサービスに関する詳細は、https://www.windriver.com/services/をご覧ください。

[1] 2015年11月時点でのガートナーの予測。
http://www.gartner.com/newsroom/id/3165317

[2] インテル、IDC、国連による共同レポート。
http://www.intel.com/content/www/us/en/internet-of-things/infographics/guide-to-iot.html

[3] http://www.wired.com/2014/01/googles-3-billion-nest-buy-finally-make-internet-things-real-us/